「技術的負債」を管理する:増えすぎたBIツールを1つにまとめる方法

最先端のソリューションを次々と導入する事業部門を横目に、CIOは増えすぎたBIツールや分析ツールにうんざりしているのではないでしょうか。多くの業界調査のデータが示すとおり、低迷する経済のなかでもデータや分析にかける予算は増え続けていますが、一方で重複する機能を整理するために精査や引き締めも行われています。本ブログでは、BIツールのポートフォリオがこれほど雑然となってしまった経緯と、それを合理化する方法をまとめました。

技術的負債:データ管理者の足かせ

技術的負債(technology debt)は、特に大企業にとっては致命的な問題です。スタートアップ企業なら、一から最新の分析スタックを100%クラウド上で構築することもできるでしょう。それでも、イノベーションのスピードが速いため、分析とBIに対する投資への戦略的アプローチは不可欠です。

最新のテクノロジーは時間の経過とともに変化し、創造的破壊のスピードは高まるばかりです。また、分析ツールの購入主体も変化します。かつて個々のユーザーや事業部門が購入したTableauやQlikをオンプレミスに展開する流れが、やがて企業による購入へと拡大しました。デスクトップツールに代わってサーバーベースの製品が利用されるようになり、購入や管理の権限はIT部門の手に移りました。さらにそのサーバー製品に代わってクラウドのSaaSアプリケーションが導入され、購買の権限が再び事業部門に戻ったのです。データのビジュアライゼーションやダッシュボード製品は、ビジネスユーザーが利用しやすい拡張分析プラットフォームにその座を奪われつつあります。dbtやSnowflake、Google Big Queryといったクラウドエコシステム製品との統合は、5年前には購入の選択肢ではありませんでした。ましてやGPTやBardのようなLLMとの統合などは、5か月前には考えられなかったことです。

テクノロジーの変化とともに求められる要件も変わり、企業はイノベーションを活用しようとする限り、技術ポートフォリオの全面的な刷新を余儀なくされます。考えてみてください。古い車の維持費用がかさんできたら、ある時点で新車に乗り換えることになりますね。同じことが分析やBI用のソフトウェアにも言えるわけです。

問題は、私たちの業界は新しいテクノロジーの導入は得意でも、その廃止は非常に苦手であるという点にあります。

ほとんどの組織は、実際どのようなツールが使われているかすら見えていません。何かを廃止することに対する恐怖感については、CDOや分析リーダーたちから話を聞いたことがあります。実際に廃止を実行したリーダーは、「9,000件のレポートを停止して、どこから苦情が出るか固唾をのんで見守る」状況だったと表現しました。たいていの場合、後になってわかるのは、日常的に使われていたレポートは一握りだったということです。

さらに、テクノロジー投資戦略の対象期間はますます短くなり、イノベーションは加速の一途をたどっています。かつては技術標準の設定を見込んだ妥当な投資時間軸は5年から10年でしたが、今では3年から5年に短縮しています。確かにSaaS分析プラットフォームによって展開の面では切り替えコストは下がるのですが、スキルアップや分析コンテンツに対する投資があるために、分析ポートフォリオの最新化は今も変わらず難題となっています(First Mark Capitalの 最新のMADDフレームワークを参照)。何年もかかってツールの信頼性や専門性を確立してきたアナリストやエンジニアが、別のツールで一からやり直すことに難色を示すこともあるでしょう。

また、合併や買収も、企業が複数の分析ツールを抱える原因になります。

ポートフォリオを合理化・最新化する4つのステップ 

1. 変更の理由について深堀する

テクノロジーの最新化そのものを目的とした変更を歓迎するビジネスユーザーは、ほぼ皆無でしょう。誰もが忙しいため、変更はやっかいです。時勢に遅れないためのアップグレードを推進しようとしても、押し付けにしかなりません。部署あるいは企業全体のビジネスの観点から見ていかに重要かを根拠として、最新化の提案を組み立てましょう。また、単なる改善の意欲よりも恐怖心が強いモチベーションになることはよくあります。ですから、競合他社に先んじること、あるいは、勝者が独り勝ちするデジタル経済において遅れをとるリスクを回避できることも、最新化のメリットに含めてよいかもしれません。

WIIFM、すなわち「What is in it for me?(それは私にとって何の意味があるのか?)」をはっきりさせましょう。モチベーションは人によって異なるものです。分析リーダーや変化の推進者としての皆さんは、関係者一人ひとりの WIIFMを明らかにしなければなりません。そこで、組織内のさまざまな役割に対して何がモチベーションになるのか、以下の例から考えてみましょう。

  • CEOのモチベーション:クラウドの最先端の分析機能が、企業のミッションの実現や事業目標の達成にどう役立つか。

  • CIO/ITマネージャーのモチベーション:最小のコストでデータが組織の役に立つこと。リスクを嫌うITユーザーたちは、大手ベンダーから購入するのがリスク軽減の方法だと考えるかもしれません。「IBMから購入してクビになった人はいない」という主張はかつてこそ有効だったでしょうが、分析業界のイノベーションの多くは専業のスタートアップ企業から生まれています。Microsoft Power BIを会社のBIスタンダードにしたい理由としてCIOからよく聞くのは、Microsoftとの契約の一部で「無料」だからというものです。しかし、閉塞状態のダッシュボードを開発するために高いサポート費用を伴うのでは、「無料」といっても競争力のメリットはありません。

    SargentoがPower BIではなくThoughtSpotを選んだ理由をご確認ください。

  • CDO/CDAOのモチベーション:ユーザーを満足させ、データドリブンの組織構築の一環としてセルフサービスを可能にすること。CDOはビジネスバリューの実現で評価されることが増えており、分析プラットフォームがどの程度バリューの実現に貢献するかによって、各部署に購入権限を与えることになります。

  • データアナリストのモチベーション:事業にインパクトを与えること、最新のスキルを維持すること。そして、スプレッドシートやダッシュボードの担当者ではなく、ビジネスのパートナーとして見てもらえること

  • ビジネスユーザーのモチベーション:ビジネスのKPIを最適化するものなら何でも歓迎。直観にもとづく意思決定よりも速く、簡単で、正確でなければ、データは意味を持たないという認識です。

2. ユーザーのペルソナを理解する   

最初のポイントでも説明したとおり、それぞれのペルソナにはそれぞれのWIIFMと異論があります。データアナリストなら、忙しくても新しいテクノロジーを喜んで学ぼうとしてくれるかもしれません。でも一般のビジネスユーザーについては、特にデータに不信感を持っていたりすると、それは望み薄です。本来、分析のワークフロー内のペルソナごとに機能の要件は異なるものですが、伝統的にこの業界はBIユーザーを2種類のペルソナ、つまり「生産者」と「消費者」だけに限定して考えてきました。現在では各業務がデータ要素を持っており、二元論ではペルソナの理解として単純すぎます。新しいコンテンツの探求・やりとり・生成、データの準備、機械学習モデルの生成などをどの程度求めているかは、その人の役割によって異なります。たとえばデザインに関わるペルソナでもAdobe Photoshop、Canva、PowerPointと使う製品が違うように、データサイエンティストと分析エンジニア、データアナリスト、ビジネスユーザーでは、要件がはっきり異なることを認識しなければなりません。

一方、それぞれのアナリティクスベンダーは、特定のペルソナにフォーカスした強みを持っています。この強みは、時間とともに進化します。たとえば、ThoughtSpotは当初、主にビジネスユーザーに焦点を当てていましたが、近年そのケイパビリティがTMLやdbtの統合にまで広がって、分析エンジニアにもアピールするようになっています。また、ひとつのプラットフォームが多数のペルソナのニーズに等しく役立つかと言えば、それは議論の余地があります。したがってベストプラクティスは、ポートフォリオ内の各ツールの長所をペルソナに反映させて、意思決定のフローチャートを作成することです。

3. 選択的に変更する

そうでなければ、まったく変更しないほうがましです。善意にあふれたBIマネージャーの多くは、レガシーコンテンツを最新の分析プラットフォームに変更することがユーザーの利便性に貢献すると信じています。しかし、ビジネスニーズの観点からもテクノロジーの観点からも、これが正解であることはまれでしょう。多数のレポートやダッシュボードを一体何人のユーザーが利用しているか、誰も知らないことが多い現実を考えてみてください。AIを活用したアナリティクスでは、ひとつのLiveboardが数百件のレポートの代わりになります。オンプレミスの時代には、パフォーマンス上の理由からデータはサブセット化され、キューブや抽出に集約されることがよくありました(クラウドの時代にはその必要はありません)。そのため、サブセット化や集約、キューブの構築がダッシュボードやレポートの供給過剰の原因になっていました。すべてのレガシーコンテンツを新しいプラットフォームに移行するべきとは限らないのです。コンテンツが必要とされない、あるいは再構築したほうが効率的である可能性があるからです。

4. レガシーを廃止する

BIプラットフォームは組織の中でゆっくりと廃止に近づきながら何十年も生き続け、複雑性とコストを積み重ねていくのが普通です。初期のBIツールには堅牢なガバナンスや使用状況レポートがなかったため、BIを担うリーダーたちにも実際に何が使われているのかがほとんど見えていませんでした。そこで、戦略的に無効なBIツールを積極的に廃止するために、以下のアプローチを推奨します。

  • レガシーのBIツールにメンテナンス料を支払うのをやめる:オンプレミスのソフトウェアは、年間のメンテナンス費用の18%から25%を占めています。

  • レガシーのBIツールを使った新しい分析コンテンツの作成を凍結する

  • 戦略的な分析プラットフォームが立ち上がって運用が始まり、スキル再習得に投資したら、レガシーアプリケーションを廃止する

  • 廃止のインセンティブを設定する:画期的な新テクノロジーの導入を歓迎するだけでは、たとえ経費節約につながるといっても、技術的負債の削減に取り組む意気込みは生まれないでしょう。たとえば、American Expressは、廃止を実行した社員が褒賞を得られるようにしています。

下の動画は、「イノベーション」「共存」「廃止」という典型的な過程を表したものです。「共存」の段階で、Interworks Curator、Metrics Insights BI Portal、Zenopticsといった単独のペインからコンテンツにアクセスできる分析ポータルを活用することを検討しましょう。

最新のデータエクスペリエンスを活用する

分析とBIがこれほど注目をあつめるのは、かつてなかったことです。クラウドデータプラットフォームやGPT、生成AIの成熟は、働き方改革の始まりを告げるものです。セルフサービスやローコードツールによって、データへのアクセスがユーザー一人ひとりの手に渡ることになります。

最新のデータエクスペリエンスを取り入れることによって、医療コーディネート企業Wellthyでは、全ユーザーがセルフサービス分析を利用できるようになり、既存のBIプラットフォームを撤廃しました。皆さんも、分析とBIのポートフォリオを簡潔にしながらイノベーションを最大化する、このような変革のチャンスを見逃す手はありません。

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