モバイル体験デザインのケーススタディ

概要

創業以来、ThoughtSpotは、分析スキルのレベルに関係なく、すべてのビジネスプロフェッショナルに検索とAIを活用した分析の力をもたらすことで、より事実に基づいた世界を築くことに重点を置いてきました。ThoughtSpotを使用すれば、誰もが優れた意思決定をするためのインサイトを得ることができます。

しかし、意思決定の本質は変わり続けています。現在では、外出先で意思決定が行われることが多くなりました。ThoughtSpotは、ビジネスユーザーが意思決定を行うタイミングや場所に関係なく、必要なインサイトに辿り着けるように、iOSおよびAndroid向けにThoughtSpotの提供を開始しました。

これを実現するために必要なことをまとめたケーススタディを以下に示します。

  

問題/課題

ビジネスユーザーには意思決定を行う機会が数多くあるため、それらを裏付けるデータが必要です。今の世の中において、デスクトップPCの前に移動するのに時間がかかる場合が多くあります。スマートフォンを手に取り、重要なKPIを数秒で確認できれば、どこからでもビジネスを前進させることができます。

ユーザーペルソナ別の調査

ThoughtSpotでは、モバイルの計画段階において、顧客や市場の調査を実施しました。この調査から得られた主要なインサイトによって、製品の公開版が定義されました。

対象としたユーザーのペルソナは主に次の2種類です。

  1. ビジネスユーザー:外出先で分析を必要とするユーザー

  2. アナリスト:ビジネスユーザーの可能性を引き出すユーザー

  

ユーザーストーリー

ユーザーの行動や心情、課題、望んでいる成果を理解した上で、ユーザーストーリーの作成に進みました。

  1. ビジネスユーザーは、移動中であることが非常に多く、必ずしもノートPCを使用できる状況であるとは限りません。また、KPIをスマートフォンで確認できることを望んでいます。

  2. マネージャーは、質問に迅速に回答したり、在庫の減少などの状況をすぐに把握したりできるモバイルの利便性を求めています。

  3. 外勤営業(フィールドセールス)は、会議中に顧客の利用状況に関するデータを引き出すことができれば、信頼性が高まり、説得力のある議論ができます。

  4. アナリストは、モバイルフレンドリーなダッシュボードを使用することで、エグゼクティブが納得するインサイトに富んだものを構築できます。

リスク

セキュリティ:モバイルアプリ導入の成功には、簡単にアプリを開いてファイアウォールを設定できる方法が不可欠です。最も安全性の高い方法は、Microsoft IntuneやMobileIron、AirWatchなどのMDM/MAMソリューションを使用することです。これらのすべてのソリューションを用いて構築し、サポートを維持することは困難です。

複雑性:BIツールの導入率は低いですが、他のBIツールのモバイルBI導入率はさらに下回ります。導入率の低さには、モバイルの豊富な機能に原因があるようです。インタラクションは、極めてシンプルにする必要があります。

目標

Thoughtspotでは、大まかな目標として、主要な情報に素早く簡単にアクセスできるようにし、製品に魅力のある価値を付加することで、ユーザーの導入率とエンゲージメントを高めることを掲げていました。

発見

ユーザーのメンタルモデルを把握するための共通パターンに対するインサイトが得られるように、同様の機能が搭載された他のアプリやプラットフォームを調べました。

  

情報アーキテクチャー

調査の段階が終了した後、収集したすべてのデータを使用して情報アーキテクチャーを作成しました。

  

ワイヤーフレームの作成

既存の問題点を解決するために、忠実度の高いワイヤーフレームを作成しました。

 

ビジュアルデザイン

基本的な特長に関するワイヤーフレームとワークフローの作成後、プロジェクトのビジュアル面の作業を開始しました。

  1. ユーザーのオンボーディング体験

    初回ログインユーザーの体験:Thoughtspotは、ユーザーの初めての体験を重視して設計を行いました。ユーザーが最初にすべきことを定義し、ユーザーの関心を維持しようというものです。そして、利用可能なオプションの中で関心のあるものを見つけてユーザーに推奨したいと考えました。

    Eメールによるオンボーディング:ログイン時にサーバーURLへの接続に失敗するユーザーが多いことが分かったため、ログイン時にメールIDを収集して、対応するサーバーURLをユーザーのデバイスに送信し、必要に応じてユーザーに連絡できるようにしました。

    ホーム画面のピンボード設定: ユーザーが初回ログイン時にホーム画面のピンボードを設定できるようにサポートします。ユーザーは、組織内のピンボードのリストから自分のホームピンボードを選択したり、ホームピンボードにビジュアライゼーションをピン留めして自分だけのピンボードを作成したりできます。

  2. スピード

    ワンタップでアクセス可能なホームピンボード:ホームピンボードは、最も重要なデータを扱うコマンドセンターのような機能です。操作はタップするだけです。これは、ユーザーがアプリを開いたときに最初に表示されます。ビジネスへの回答は、株価や天気を確認するのと同じくらい迅速で簡単に入手できます。

    超高速グラフ:インタラクティブで超高速なグラフによって、生き生きとしたデータを表現できます。ユーザーは、グラフの各データポイント間をすばやくスワイプしてツールチップで詳細を確認できます。KPIを追跡するCEOから、パフォーマンスデータを分析する外回り中の営業担当者まで、誰でも必要な答えを数秒で取得できます。

    クイック共有:ユーザーは、思い立った瞬間に情報を同僚と共有できます。ThoughtSpot Mobileは、iOSやAndroidのネイティブ共有シートと統合されているため、ユーザーはメールやSlack、Microsoft Teamsといった、共有機能に対応するアプリに安全に投稿できます。ThoughtSpotでは、グラフへのリンクとその画像の両方を共有しており、チームメイトがそのインサイトに基づいて、迅速に対応できるようにしています。<br>

  3. カスタマイズ性

    ピンボードのフィルター機能:ピンボードフィルターは、驚くほどパワフルな機能です。同一のピンボードで、エグゼクティブは会社全体を大まかなビューで見渡すことができると同時に、調達やカスタマーサポートのマネージャーは、業務を行う上で必要な特定の製品やアカウントを詳細なビューで確認できます。大手企業は、企業にとって重要なKPIやグラフを使ってピンボードを作成し、フロントラインチームが注目している地域や顧客、個々のSKUのフィルターを追加できます。

    お気に入りへのアクセス:リアルタイムで多くのインサイトが作成されるため、ユーザーは自分にとって最も重要なデータを追跡する方法を求めています。ユーザーは、お気に入りのピンボードや回答を一箇所で確認できるほか、必要に応じて項目をこのリストに追加したり、リストから削除したりできます。

    ドリルダウン機能:モバイルをビジネスユーザー向けの真のセルフサービスにするために、ビジネスユーザーがデータに関して抱える基本的な質問をできるようにしたいと考えていました。ユーザーは、任意のデータポイントをタップしてツールチップを表示し、ドリルダウンする列を絞り込んで選択できます。拡張性を重視し、ユーザーは、ドリル機能を再トリガーしてドリルダウンを続けることができます。<br>

  4. 信頼性

    オフラインでのアクセス:ホームピンボード機能は、データ接続の有無にかかわらず利用できます。キャッシュデータは暗号化されており、安全です。オフラインでデータが表示できることは、データの速度が遅くてもユーザーの業務には影響しないことを意味します。つまり、接続速度に関係なく、瞬時に回答を取得できます。

    シームレス認証:ThoughtSpot Mobileでは、ユーザーが安全にログインできるようにSSO認証をサポートしています。

    MDMサポート:ThoughtSpot Mobileは、IT部門がデータのセキュリティポリシーを履行できるように、主要なモバイルデバイス管理(MDM)プラットフォームと連携しています。

ユーザーテスト

ユースケースと改善点を検証するために、数十名の参加者を招集し、機能的なプロトタイプのユーザーテストを複数回実施しました。参加者の反応を記録し、データを比較しました。各回のテストでは、完全に機能する面と、繰り返しが必要な面がありました。貴重な情報をひとつひとつ取り込んで修正を重ね、現在のデザインに辿り着きました。

目的

この調査は、既存のアプリの特性や機能をその場で改善するために、アプリの体験全体について顧客からフィードバックを得ることを目的としていました。私たちは、アプリの作業ユーザーフロー内でのデザインとユーザビリティーの効率性を判断し、情報アーキテクチャーにおける潜在的な異常や弱点を特定して、ユーザーナビゲーションの容易さを確立したいと考えていました。

この調査のおかげで、次のような疑問が解消されました。

  1. 1. ホームピンボードの概念を理解し、ボーディング内の課題(例:既存のピンボードを選択してホームピンボードを設定、アイテムをピン留めして新規ピンボードを作成)を問題なくクリアできているか。

  2. ピンボード、グラフ、回答、お気に入り機能などを見つけ、効率的に利用できているか。

  3. 既知のUXの問題に直面することなく、フィルターを使用できているか。

インサイト

モデレートされたユーザー調査によって、次のインサイトが得られました。

  1. ユーザーは、任意のピンボードを自分のホームピンボードとして設定する前にプレビューで確認したいと考えている。モバイル体験をウェブにリンクして、ユーザーがウェブプラットフォーム上にピンボードを作成し、モバイル用のホームピンボードとして割り当てられるようにすることが望ましい。

  2. ユーザーは、グラフの種類の変更や表とグラフの切り替えのほか、注釈の追加機能を求めている。

得られた知識

私たちは、顧客が業務でアプリを使用して、ビジネスに変革を起こしているところを目の当たりにしました。

たとえば、大手の小売企業の子会社では、ThoughtSpot Mobileを利用して、Market Asset Protection Manager(MAPM)がシュリンケージの根本原因を発見し、シュリンケージの可能性を最小限に抑えられるようにしています。MAPMは、担当店舗を定期的に訪問し、店舗フィルターを使ってピンボードを表示し、各店舗の情報を確認しながらシュリンケージに関する調査を行っています。モバイルアナリティクスでは、関連のある質問への回答を、その場で最初に得ることができます。

1日限りの特別なセール時など、データを1時間ごとに更新できる機能により、あるMAPMは、店舗前の出迎え担当者が多くの商品をスキャンしていたがレジ担当者によって記録されていなかったことに気付くことができ、この問題を修正することができました。

 

「ThoughtSpotのモバイルアプリを導入したことで、当社のリテールマーケティング担当者の生産性と仕事の満足度が向上したことを実感できました」

Karen Rambo氏<br>HAGGAR CLOTHING CO.<br>リテールマーケティング&オペレーション部門長