データリテラシーが低い状況でセルフサービス分析を実現する

データドリブンな組織を作る一環としてセルフサービス分析を推進しようとしている顧客から、「従業員のデータリテラシーが低い場合に、セルフサービス分析を遂行できますか」とよく聞かれます。または、最初にデータリテラシーを改善する必要があるという誤った考えから、「まだセルフサービス分析の準備が整っていない」と言う場合もあります。

しかし、この2つは密接に関連しています。たとえるならそれは、子供にスキルを育てるための本を与えずに読み方を教えるようなものです。.

データリテラシーとは

Successful Business Intelligence』(ビジネスインテリジェンスの成功)に書いたとおり、 テクニカルリテラシーとデータリテラシーには大きな違いがあります。業界として、使いにくいBIツールの従業員トレーニングに過度な時間を費やしていますが、データリテラシーのトレーニングに費やす時間はあまりに不十分です。Gartnerは、データリテラシーを、ビジネスのコンテキストでデータを読み、書き、話す能力として定義しています。データを、脅威となる可能性のある新しいものとして考える代わりに、ビジネスの言語として考える必要があります。たとえば、野球のアナリストは、RBI(runs batted in、打点)やWHIPS(walks plus hits per inning pitched、投球回あたり与四球・被安打数合計)といった用語を使います。従業員分析のプロフェッショナルは、人員の漸減、定着率、多様性の指標を理解しています。さらに、保険業界に従事する人々は、ICD(insurance claims data、保険請求データ)やCHAM(Client High Acuity Model)といった用語を聞き慣れています

<br>データリテラシー vs. データフルエンシー

データフルエンシーとは、データを読んだり、コミュニケーションする能力以上のもので、データを使って考えることです。私はこの分野に20年以上携わっていますが、どんなビジネス上の問題に対しても、どのようなデータを活用できるかについて日常的に考えています。たとえば、

  • サプライチェーンの混乱 :  他のどこから製品を調達できるでしょうか。人の移動から需要がどのように変化するかわかるでしょうか。

  • 公衆衛生 : DNA、血液型、ライフスタイルのデータから、誰がCOVID-19から重篤な病気になりやすいかわかるでしょうか。(はい、わかります。

誰もが同じレベルで読書ができるわけではないように、全員が同じレベルのデータフルエンシーを備える必要はありません。データエンジニアは、データの出どころ、データにギャップや潜在的な偏りなどがあるかどうかを理解する必要があるかも知れませんが、マネージャーは、データを解釈して操作するだけで良いかも知れません。しかし、データについて批判的に考え、ギャップや偏りがあることを認識できるようにするためには、誰もが必要とするフルエンシーの基準レベルがあるということを強調しておきます。     

これについて私たちがいかに不得手であるかを示す最近の例が2つあります。

LinkedInは最近、シリコンバレーから労働者が大量に流失したというデータを公開しました。しかし、それだけ多くの人々が実際に移動したのでしょうか。LinkedInプロフィールを持つようなナレッジワーカーだけなのでしょうか。サービス業界のワーカーについてはどうなのでしょうか。ほとんどのデータソースがそうであるように、このデータセットにもギャップと偏りがあります。 

COVID-19の症例数は、多くの国で大幅に過小報告されています。これは検査が普及しておらず、十分なデータを収集することができないからです。パンデミックの初期には米国とヨーロッパにも同じことが言えました。今では、検査をより容易に受けられるようになったかもしれませんが、感染者が全員検査を受けるわけではないため、データの偏りは存在しています。

これについて、The Data Lodgeの創設者で、以前はGartnerの主任トピック調査アナリストだったValerie Logan氏は、次のように説明しています:データリテラシーは単なるビジネススキルではなく、ライフスキルである。

データリテラシーの現状

Accentureが実施した調査によると、データに確信を持っているビジネスパーソンはわずか21%でした。World Economic Forumは、需要のある仕事のトップ3にデータ関連の仕事を挙げていますが、採用可能な人材には大きな格差があると言及しています。国によって異なりますが、これらのスキルはまだ大半の教育機関で教えていません。米国連邦政府は、データリテラシーの改善をFederal Data Strategy(連邦データ戦略)の一部としています。

組織がデジタルトランスフォーメーションへの取り組みを迅速化し、データドリブンな組織の実現を切望する会話がエグゼクティブと取締役会レベルで交わされるようになるにつれて、各企業は、正式なデータフルエンシープログラムを確立する責任を担う必要があります。2021年6月にLinkedInの世論調査が以下を示したとおり、多くがこのようなプログラムを探しており、プログラムを順調に拡大しているのは13%でした。  

データフルエンシーを推進するためのベスト・プラクティス

従業員全体のデータフルエンシーを高めるには、以下のベストプラクティスに従ってください。

  • データフルエンシーの改善を中核的な組織目標にし、人事部門と事業部門の協力を得て、CDO(Chief Digital Officer、最高デジタル責任者)がそれを先導する。

  • 分析、データのストーリーテリング、テクニカルの各スキルを強化するため、地域の大学およびオンライン教育プロバイダーと提携する。

  • その領域で必須の専門知識とソース内での領域固有のトレーニングの提供によって、テクニカルスキルとデータスキルを区別する。 

  • ジョブの役割とレベルを評価して、既存のスキルの一覧を作成し、役割とレベルごとに必要な異なる習熟レベルを割り当てる。

  • スキルアップは必ず、少しずつ継続的に行います。従来の講義型トレーニングを超えて考え、昼食時の学習、週1回の業務時間内、分析日、アプリ内学習を含める。

  • スキルの向上は、バッジや認定証で報奨し、ゲーム性を持たせる。

さらに理解するためのその他のリソース

  • The Data Chief Liveを視聴し、The Data LodgeのValerie Logan氏からのベストプラクティスとともに、Red HatとNationwide Buildingがデータフルエンシーにどのように投資してきたかを聴いてください。 

  • How to build data literacy in your company(企業でのデータリテラシーの構築方法)、MIT Management