Data Trends

データドリブンになることのメリット、デメリット、そして不都合な点とは

米国中の役員会で、さらにデータドリブンにならなければというトピックが取り上げられています。データが新たな石油であるならば、組織がデジタル改革の一環としてこのデータを採掘し利用することは、顧客や市場シェアの獲得だけでなく、ビジネスの存続にとっても重要です。

では、自社がデータドリブンであると考える企業が全体の3分の1にも満たないのはどうしてでしょうか。すべての投資がデータの収集と生成に費やされていて、そのデータをアクション可能なインサイトに変えることができていないようです。間違えないでください。テクノロジーは存在します。特にAIを活用した分析の最近の進歩は顕著です。企業の前進を妨げているのは人的要素なのです。

完璧なデータドリブン企業であれば、決定は事実に基づいて行われ、指標により動機付けがなされ、データがオープンに共有され、信頼と透明性が何よりも優先されます。これは単純なことに聞こえるかもしれませんが、多くの顧客の経験談を聞くと、実行するのは簡単ではないことが分かります。

Gartner社における4年を超えるリサーチ担当バイスプレジデントとして、そして現在のThoughtSpotにおける最高データ戦略責任者としての経験を含む、データ分析における20年の経験に基づき、データドリブンな企業の核となる原則をビジネスで実現するための私の戦略をお伝えします。

問題点に注意を向けさせる:直観と経験

データドリブンになるということは、個人やチームが何十年にもわたって決定を行ってきた方法を変えるということです。信頼できるデータ(すなわち事実)が存在しない場合、人は無意識のうちに経験や直観、チーム内の知識に頼りがちです。

これが十分なアプローチであった時代もありました。自身の顧客をよく知る小さな街の小売店、または映画『素晴らしき哉、人生!』のジミー・スチュワートのような貸付屋を想像してみてください。しかし現在では、多くの取引きがデジタルであり、規模も大きく、個人的なやり取りはほぼデジタルに置き換えられています。

場合によっては、人を知る唯一の方法は、その人のデジタルの痕跡をたどることです。痕跡を見つけることができれば、ですが。多くの企業はこの痕跡を手に入れますが、それを意味のある詳細なレベルで利用できる企業はほとんどありません。

クラウドやデータレイクのような新しいテクノロジーを使用すれば、企業は大量の詳細データを取得することができます。新しい分析ツールにより、トレーニングなしで、誰もがGoogleのような検索コンセプトを使用してデータについて質問できるようになりました。企業データについても同様です。音声による指示でAlexaに好きな音楽をかけさせることができるように、銀行員が「今年と去年を比較して、口座所有者トップ10を表示して」と言うようなかたちで質問することも、ますます増えています。

多数派の動機を高め、その他の人の軌道を修正する

データの共有と公開が進むにつれ、データの背後にあるストーリーから、プロセスの破綻やパフォーマンスの悪さが明らかになることがあります。そのデータをどのように扱うかによって、人々がデータを隠そうとするかどうか、あるいはもっと悪いことに、システムを悪用しようとするかどうかが決まります。

たとえば(私が20年以上も得意客であった)Wells Fargoでは、口座所有者に抱き合わせ商品を販売する銀行員のパフォーマンスを、データを使用して測定していました。これは素晴らしいアイデアのように見えますが、実際にはうまくいきませんでした。顧客が商品を購入しない場合、行員には歩合給の削減、さらには解雇などのペナルティが課されました。指標の定義が不適切で非現実的なものであっても、同行の文化では、管理者への批判はしにくいものでした。同行は現在、顧客の信頼を失い、数億ドルにも及ぶ罰金に直面しています。

その一方で、Learning Circle はデータを使用して教師がより効果的に授業を行えるように支援しています。教師はある生徒に効果的な方法と、他の生徒に効果的ではない方法を理解できるようになりました。さらに同社は、欠席、規則違反、または成績の下落など、生徒の行動に変化が見られた場合に教師が介入できるように、早期の警告システムを作成しました。

これは、私がよく言う「私にとって何の得があるのか」に繋がります。つまり、データドリブンになりたいと望むのであれば、その取り組みを企業の目標だけでなく、個々人の目標にも沿ったものにする必要があるということです。データの使用が、解雇や歩合給の削減に繋がるのであれば、データを使用するモチベーションは上がりません。それどころか反対のことが起こり、人々はデータを隠し、データを信頼する努力を妨害します。

一方、データにより営業担当者の歩合給が上がったり、生徒を支援する教師の能力が向上する場合には、データ使用は支持を集めるでしょう。

信頼と透明性を優先する

英国では、国営医療サービス制度が公共医療のモデルとしてよく挙げられます。数年前に、政府は医療ケアを改善する目的で、匿名化された患者データを収集し、共有する取り組みを開始しました。しかし人々は、自分の医療記録が不利に使用され、場合によっては職を失うのではないかと恐れました。

このプロジェクト、care.dataは失敗に終わりました。新しく開始されたHealth Data Research(医療データ調査)は、同じデータを活用しようとする2度目の試みですが、取り組みの一環に前回より高い透明性と多くの教育が含まれています。

不透明な方法でFacebookがデータを収集し、そのデータを選挙に影響を与えるために使用したスキャンダルにより、データの収集と使用に対する人々の不信感はますます高まっています。

政府が関与するかどうかにかかわらず、データを収集する企業の透明性と理念が差別化要因であることが明らかになるでしょう。この透明性の欠如とデータの不適切な使用がきっかけとなり、複数の州の司法長官がGoogleとFacebookのデータ使用について捜査を開始しています。

倫理と文化は密接に関連しています。何としても議論に勝つため、仕事を維持するため、または会社が生き残るために、嘘をついてもいいでしょうか。よくないですね。しかしこれは頻繁に起きていることです。最近ある顧客が、嘘であり偽りである数値を「空しい指標」と呼びました。数値を共有することは表面的にはデータドリブンに見えるため、これはもっともな名前ですが、データに関する厳しい真実は表面には現れず、リーダーによって隠蔽されている詳細部分に潜んでいる場合があります。

去年、虚偽の排ガステスト結果.を出す装置を開発したことで、アウディ社が捜査の対象となりました。同様に、英国の首相ボリス・ジョンソンは、英国のEU離脱キャンペーンの一環として、EUに拠出する金額を偽ったとして捜査を受けています。地球温暖化や性別による賃金格差が本当に問題なのかという論争もこれらと同じような例です。問題なのは、意見の異なる両者がそれぞれのデータを持ち出し、どちらが正しいかを判断するのが困難なことです。

データが嘘のために使用されると、人々はデータではなく直観を信頼するようになり、自ら進んで情報を提供している人々のことを忘れてしまいます。この問題に対処するため、企業は利益よりも信頼と透明性を優先する必要があります。あるCDOが最近私に、「データを使って何かできるからといって、そのデータで何かをすべきだということではない」と言いました。

この点については、善意が重要です。しかしそれだけでなく、意図しない結果とならないように、先を見越してデータの不適切な利用や乱用の可能性を評価する必要があります。さらに組織は常にインセンティブを再評価し、マイナスの行動を招かないようにする必要があります。たとえば、アウディが排ガスのデータが良くないと気付いた時、データが望ましいものではなくコストがかかっても、その問題に対応するという健全な文化がアウディにあったでしょうか。

世界全体、または国や業界全体において、私達のデータリテラシーが低い場合、どのデータを信頼すべきか、どの数値が有効かを判断することは困難です。私達は、自分の論点やすでに下された決定を支えるデータにしがみつき、別の見方を示すデータを軽視する傾向があります。

データリテラシーを中学や高校の主要教科とすることが理想的ですが、残念ながら米国では現在そうなっていいません。一方オーストラリアでは、公的部門の従業員のスキルを向上するデータリテラシーの枠組みが発表されました。

Girls Plus Dataのような組織は、子供たちに分析スキルを教えています。このようなワークショップは、生まれた年に人気だった名前や、男子と女子の教育の違いなど、自身に関連する興味深いデータに対するティーンエイジャーの生来の好奇心をうまくつかんでいます。

また私は、ビジネス分析に関するオンライン教育や企業幹部向けの教育を提供する大学の取り組みにも注目してきました。組織内では、CDOは、ビジネスデータを実際の文脈の中で使用した、データリテラシーの研修を継続的に提供する必要があります。

データドリブンの意思決定という組織文化を育むには、最良のテクノロジーを採用するだけでは充分ではありません。本当に必要なのは、データリテラシーが当たり前のことになり、目標とインセンティブが適切に連携され、データを使用してビジネスと世界を改善するために誰もが役割を果たす、オープンで透明な環境です。

オリジナルの記事は『Information Management』で公開されました

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